いきなりのカミングアウト

 中学生だったあのころ・・・

自分には家庭教師がいた。

週に一度は勉強を教えてもらって、いろんな話をした。

そんなある時、突然ベースを持ってきてくれた。

それが音楽との出会い・・・

そしてベース楽しいからやってみる?と優しく教えてくれた。

その時の課題曲だったのが「路地裏の少年」

少年が成長していく一方で、行き詰りや

いろいろな葛藤を描いている一曲。

悶々としていた自分と照らし合わせていた。

それから自分がはまったのは、「ベース」

ではなく「浜田省吾」だった。

 

その後、高校生になり、社会人になった時、

親元を離れた。

 

ある時、実家から電話があり、

「おまえの部屋にあったアンプとベース・・・

あれ、処分していいよな」

そんな問いかけだった。

 

自分が好きなのは「ベース」ではなく「浜田省吾」だし、

ずいぶん邪魔になっているみたいだし・・・

 

「いいよ、別に」

 

忙しくて、十分考える暇もなく、そう答えていたのを覚えている。

 

あれから20年程経ち、

中学生だった自分は、中学生の父親になり

自分が歩んできた道や、その時々の思いをふり返ることが出来るようになった。

 

そして、あの時の自分の軽率なやり取りを取り戻したい。

 

物はいつか壊れたり、無くしたりするが

 

「こんな人生もあるよ」「こんな音楽があるよ」と

語りかけてくれた恩師に

 

そしてその「思い」に対して

 

謝りたいし

 

お礼を言いたい。

 

 

 

 


浜田省吾 『路地裏の少年 (ON THE ROAD "FILMS")』